高校受験家庭教師の極意


1. 授業で最初にすべきこと
〜生徒の能力を引き出す下地を作る
2. 生徒が自ら考えようとする意欲を引き出す
3. 〈コラム〉親の関わり方
4. 教師は頼られる存在であるとともにきさくである必要がある
5. 生徒の記憶に残りやすいように問題を単純化する

 

 家庭教師の先生で生徒に教える問題が解けない先生はいないと思います。しかし、“自分が解く”のと“生徒に教える”のでは大違いです。

 よく「詰め込み教育はいけない」と言われます。義務教育の究極の目的が“自分で考える力を育てる”ことにあることからすれば至極もっともなことです。そして、生徒の考える力を育てるには生徒が関心を持ったところから教えることが必要です。それにもかかわらず、初めから考え方を押し付けたんでは生徒としては面白くありません。大人でもそうですが、人は自分で出した結論でしか動きません。いくら正論であっても、人の下した命令には100%従うことはありません。重要なのは生徒が自分で考えて結論を出すことなんです。「理解できないことがあってもやりすごしてしまう」という生徒は勉強に対する関心を失っているんです。反対に、生徒は自分の意見や考えを聞いてくれる先生にはいきいきとした表情をみせてくれるんですね。これがきっかけで勉強が面白くなり、生徒たちが友達に勉強を教えたり教わったりするようになるのが理想的です。

 また、先生の考え方を押し付ける授業には、往々にして基本の定着をおろそかにする傾向があります。つまり、自分が解ける方法だから生徒も当然理解できると早合点して、どんどん先に進んでしまうんです。「なぜ分からないの」「どうして分かってくれないの」「何度も教えたじゃないの」「前はできたじゃない」と言ってしまう先生は特にこの傾向が強いといえます。「基本事項をなかなか覚えられない」とか「教わったことをすぐ忘れてしまう」という場合、教師がその生徒に定着させるための手間を取らなかったことが原因であることもあるんです。そういった先生には、「人に魚をとってやればその人を一日食べさせることができ、魚のとりかたを教えてやればその人を一生食べさせることができる」、このことの重要性を知ってもらいたいと願っています。

 例えば、数学は特に能力差があると言われます。しかし、ある数学者の先生が「数学は子供がわからないように教えるから子供が分からなくなる」「分かるように教えればだれでも分かる」とおっしゃっておられ、まさにそのとおりだと思いました。

 では次の問題をどのように教えるか、具体的にみてみましょう。

【問い】 下のグラフは、A地点から川の上流のB地点まで船で往復した様子を表しています。A地点より出発して20分後から、何分間か船のエンジンを止めたため、船は川に流されました。その後、エンジンを再びかけ、B地点まで行き、すぐに川を下ってA地点にもどりました。川の流れの速さと、船がエンジンをかけて進行しているときの船の静水での速さは一定とします。
(1)川の流れの速さは分速何mですか。
(2)A地点からB地点に向かう途中で、エンジンは何分間止めましたか。



【答え】(1)分速50m (2)40分間

 この問題の小問(2)を中学1年生に教えるなら1元1次方程式、中学2年生ならば2元1次方程式でいくことになります。ところが、何も説明せずに生徒に解かせれば、次のような式で解く生徒もいます。

400×90=36000(m)
400+50=450(m)
(36000−18000)÷450=40(分間)

この考え方は小学4年生あるいは小学5年生で習う“つるかめ算”です。 このほかにも、距離あるいは時間を固定して、小学6年生で習う “逆比”で解く生徒もいると思います。このように生徒が問題の解き方について予備知識や関連知識をもっている場合が多いのです。ですので、授業で取り上げるときにいきなり方程式で解くように指示すると、生徒は自分のやり方で解きたい気持ちをこらえて方程式で解くことになるんです。これでは、難しい参考書を読んでいるのとなんら変わりはありません。

 この問題を授業で取り上げるときにはまず生徒自身にアプローチさせ、つるかめ算や逆比で解ければほめてあげるべきです。この問題に限ればその方が早く解けるんですから。その上で、方程式で解くことの効用、すなわち、方程式を使えば速さの問題も食塩水の問題も生徒数の増減の問題などもいっぺんに解けてしまうことを教えるんですね。そうすれば、生徒としては自分が認めてもらったことに気を良くして方程式を積極的に使うようになります。家庭教師としては、「私のおかげで君の成績が上がったんだから感謝しろ」という気持ちは捨てて、「問題が解けるようになったのは君の努力のおかげなんだよ」というふうに、手柄(てがら)は全部生徒にあげて授業を盛り上げる余裕が必要です。

(つるかめ算の解法による場合)

  合 計(1) 合 計(2) 変化した属性
典型的なつるかめ算 全部で20匹(羽) 足の合計は56本 足の本数
本問の場合(行きに着目) かかった時間の合計は90分 進んだ距離は18000m 速さ
前のページへ  次のページへ  ページのトップへ 資料請求・お問い合わせ