高校受験家庭教師の極意


1. 授業で最初にすべきこと
〜生徒の能力を引き出す下地を作る
2. 生徒が自ら考えようとする意欲を引き出す
3. 〈コラム〉親の関わり方
4. 教師は頼られる存在であるとともにきさくである必要がある
5. 生徒の記憶に残りやすいように問題を単純化する

 

 子供を塾や学校に預けているご家庭にとってみれば、2〜3ヶ月たって成績が上がらない場合に指導者に不信感を抱くものです。ただ、初めて高校受験対策をする人が目にみえて成績が上がるようになるためにはある程度の期間が必要であることは言うまでもありません。ご家庭が不信感を抱く最も大きな原因は、生徒を預けた期間内で学習意欲や学習姿勢が以前と全くと変わらない点にあります。

 学習意欲がや学習姿勢が変わらないといった場合、勉強に対する苦手意識が勉強の妨げになっていることがほとんどです。勉強の成果は、次のように“掛(か)け算”で生み出されます。

(勉強の成果)=(能力)×(行動)×(考え方)

つまり、能力が非常に高くて実行力がある人でも、自信がなく引っ込み思案の人は多くの成果を生み出すことができません。いやいや勉強しても効率よく身につきませんから、せっかく勉強しても時間のムダになってしまうんですね。(プラス)×(プラス)×(マイナス)で成果はマイナスになってしまうんです。反対に、能力が普通の人でも自信をもって行動すれば成果は予想以上のプラスになることだってあるんです。その人のもっている“考え方”は結果をプラスにする力もマイナスにする力もあります。従って、受け持つ生徒が特定の科目や分野に苦手意識を持ち続けている限り、その科目・分野の成績向上は期待できません。兄弟姉妹や友達と比較すると、競争力の弱い子供は萎縮(いしゅく)してしまいますので特に注意が必要です。

 家庭教師として担当する生徒には、仮にその生徒が明るくて人懐っこい性格であったとしても、必ず苦手意識をもっている科目・分野があるはずです。そして、いきなり苦手な部分の治療に入るのではなく、まず“どうして苦手になったのか”という理由を把握して苦手意識を取り除く、このようにしてその生徒の学力アップの下地を作ることが必要です。ついつい「なぜ分からないの」「どうして分かってくれないの」「何度も教えたでしょ」「前はできたじゃない」「あの子はできるのに・・・」なんて言ってしまうと、かえって生徒は萎縮(いしゅく)して心を閉ざしてしまい、せっかく高い教務力のある先生が教えても生徒にとっては良い結果を生み出すことはできません。

 生徒の苦手意識を取り除く方法としては3つあります。

 まず第1は、ゆっくり質問を繰り返すことでその生徒が抱えている本当の問題点を把握することです。例えば、中学1年になったばかりのときは張り切って予習・復習に精を出していたけれども、10月ころになって突然勉強しなくなった、なんてことがあります。同じことは中学2年の秋ごろにもよく見受けられます。こんなときに「なぜ勉強しないの?」と詰問(きつもん)しても何の解決にもなりません。「なぜ」というといかけ問い掛けには生徒を非難するニュアンスが込められているために、生徒は言い訳するか黙り込むかしかできないからです。そこでとるべき方法は、生徒に対してゆっくりと質問を繰り返すことです。「最近どう?」なんて唐突で漠然とした質問ではなく、生徒が答えやすいように具体的に聞くんです。自分が欲しい答えを求めるんではなく、生徒が言いたいことを引き出すんです。例えば次のような具合です。

先生「この前の期末試験の前はあまり数学の勉強をしなかったみたいだね」
生徒「別にぃ」
先生「食事が終わるといつも自分から勉強していたよね?」
生徒「数学はもともと好きじゃないんだ」
先生「数学のどこが好きじゃないの?」
生徒「勉強しているとばかばかしくなっちゃうんだ」
先生「ばかばかしいと思うのはどんなときなの?」
生徒「家で宿題を解こうとしてもぜんぜん解けないんだ」

この生徒が抱える問題点は“怠けていること”じゃなくて、“勉強が難しくなったこと”だったんですね。生徒は素直に「理解できない」とは言いにくいんですね、プライドがありますから。そうだと分かれば対処は容易ですし、何よりも短時間で効果的な指導が可能となります。

 生徒の苦手意識を取り除く方法の2つ目は、“5回より5通りで教える”ことです。生徒に難しい問題の質問をされたとき、生徒と解答を読み合わせたところ自分は分かっても生徒はぜんぜん分からない、なんて経験はありませんか。生徒がなぜ理解できないかというと、解説にある考え方を押し付けられているからなんです。それにもかかわらず無理に5回解かせて覚えさせようとすると、生徒に大変な苦痛やフラストレーションを与え、かえって勉強嫌いになります。5通りの解き方をみせてやって、その生徒なりの解き方を教えてやるべきです。つまり「教材を」教える(詰め込む)のではなく、「教材で」教える(鍛(きた)える)ように努めるべきです。一般に「人に魚をとってやればその人を一日食べさせることができ、魚のとりかたを教えてやればその人を一生食べさせることができる」と言われますが、これは“唯一の答え方”が重要なのではなく、“答えに至る考え方”が大切だ、そういうふうに言い換えることができます。そのためにもさまざまな解法を用意した上で、生徒の目線に立って小さな成功体験を数多く積ませていくことが必要なんです。生徒の積極性を育てるのに、知識を詰め込む指導やお説教は全く役に立ちません。中学生ともなれば、人の命令に100%従うことはないからです。

 生徒の苦手意識を取り除く方法の3つ目は、生徒が目標を持って前進できるようにサポートすることです。具体的には、(1) 目を広く外に向かせて「自分だけ苦しい」「自分だけ苦手だ」という思いを軽減してあげる、(2) 合格なくして自分の利益がないことを理解させる、(3) 変わらない自分に対する将来の脅威を肌身で感じてもらう、こうした働きかけが必要なのです。ただ、漠然と「目標を持ちなさい!」と言っても、そう簡単に決意が固まるものではありません。生徒に対する働きかけと同時に、生徒の話を辛抱強く聞いてあげることによって、徐々に決意が固まっていきます。生徒に粘り強さが出てくれば、目標を持つことの大切さが分かってきたと言ってよいでしょう。

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